TOP > ヘルスケア > 女性はたんぱく質不足になりやすい!?摂取量の目安や不足すると出る症状は?
ヘルスケア/health care

女性はたんぱく質不足になりやすい!?摂取量の目安や不足すると出る症状は?

人間の身体の大部分はたんぱく質(アミノ酸)でできていて、健康な身体を作るためにはたんぱく質を摂取するのが大切だとわかっています。しかし、厚生労働省の調査によれば、現代の女性はたんぱく質不足の傾向にあるようです。ダイエットでは低カロリー高たんぱく質が推奨されることなども交え、女性のたんぱく質摂取量の目安や、不足すると出る症状について見ていきましょう。

海辺にいる女性

現代女性はたんぱく質不足!摂取量の目安とは

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、女性(身体活動レベルⅡ(ふつう))のたんぱく質の摂取目標量は以下の通りです。

  • 18~29歳:65~100g/日(総カロリー摂取量の13~20%)
  • 30~49歳:67~103g/日(総カロリー摂取量の13~20%)
  • 50~64歳:68~98g/日(総カロリー摂取量の14~20%)
  • 65~74歳:69~93g/日(総カロリー摂取量の15~20%)

一方、実際に現代女性が摂取しているたんぱく質量はどのくらいなのでしょうか。令和元年11月に実施された「国民健康・栄養調査」の結果によると、以下のような量だということがわかっています。

  • 20~29歳:61.1g/日
  • 30~39歳:61.6g/日
  • 40~49歳:65.9g/日
  • 50~59歳:64.1g/日
  • 60~69歳:70.2g/日

このように、摂取目標量と実際に摂取している量を比較してみると、ほとんどの年代で目標量に達していないことがわかります。

これは、身体活動レベルⅡ(ふつう)を基準に見た結果であり、「身体活動レベルⅡ」とは「座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む場合」を指します。

そのため、普段から運動習慣がある人など活動量がさらに多い場合は、いっそうたんぱく質摂取不足の傾向があると言えるでしょう。

ダイエットとたんぱく質の関係って?

ダイエットに良いとされるたんぱく質ですが、実際にどのように関係してくるのでしょうか。研究結果と合わせ、詳しく見ていきましょう。

たんぱく質摂取量を増やすことで、除脂肪体重の維持に

これまでの多くの研究によって、たんぱく質摂取量を増やすことで除脂肪体重を維持または増加させられるという結果が示されています(Wirthら、2020年)。

また、平均年齢45歳の男女(内、女性45,355名)を調査した研究(Alexandrovら、2018年)では、1日あたりのたんぱく質摂取量(平均1.0g/体重1kg)が増えるほど筋量は多くなることが示されていて、たんぱく質摂取量は運動習慣があるほどはっきりと増加していました。

つまり、ダイエットしながらたんぱく質の摂取量を増やせば、脂肪を減らしながら筋肉量の維持や増加が見込めるでしょう。筋肉量を増やせば基礎代謝が増えるので、より痩せやすい身体をつくることにもつながります。

65歳以上の高齢女性を対象にした研究(Genaroら、2015年)では、1日あたりのたんぱく質摂取量が1.2g/体重1kgを超えた女性で筋量と骨量が多かったという報告もあります。たんぱく質の摂取量を増やすことは、老後の筋肉量低下や骨量低下の防止にもつながると考えられるでしょう。

筋肉量の維持には、たんぱく質の摂取が重要

減量のためとして低炭水化物を心がけるダイエットなどでは、筋量を保とうとたんぱく質を多く摂取(総カロリー摂取量の20%以上)することがあります。1日あたりのたんぱく質摂取量が1.2g〜1.5g/体重1kgくらいに高ければ、減量中でも除脂肪体重を維持し、体組成を改善することができると考えられています。

また、加齢による筋量減少を抑える効果的な方法として、高たんぱく質摂取に筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。筋肉はたんぱく質(アミノ酸)から作られ、運動で壊れるたびに修復されることを繰り返して維持・増強されるからです。

このことからも、ダイエットの際に筋肉量を維持するためにも、加齢に伴う筋肉量減少を防ぐためにも、たんぱく質の摂取が重要だとわかります。

たんぱく質の摂取量が少ないと、骨密度が低くなる?

14歳〜40歳の女性(560名)を対象にした研究(Beasleyら、2010年)によれば、植物性たんぱく質摂取量が少ないと骨密度が低いと報告されています。しかしながら、たんぱく質の大量摂取(特に動物性たんぱく質)は尿からのカルシウム排泄を促し、破骨細胞による骨吸収を高めてしまい、骨密度の低下の一因となることもこれまでの研究から指摘されています。

つまり、たんぱく質を摂取するときは、過不足なく適切な量であることが重要だと考えられます。(CampbellとTang、2010年)。特に、骨粗しょう症が懸念される閉経後の女性では、動物性たんぱく質の過剰摂取が骨密度の低下を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

平均年齢61歳の男女(内、女性1,639名)を調査した研究(Sahniら、2014年)では、たんぱく質の摂取量(総カロリー摂取量に対する割合)が多いほど、骨密度が高くなる傾向が見られました。特に、カルシウムの摂取量が少ない女性で顕著だったということも報告されています。総カロリー摂取量に対するたんぱく質摂取量の割合は平均で18%であり、必ずしも多量にたんぱく質を摂ったわけではなさそうです。

女性には、たんぱく質と同時にカルシウム不足も指摘されていて、骨の健康維持のために十分摂取しなくてはなりません。上記の研究から、たんぱく質はカルシウムと同様、骨量を維持し骨の健康を保つために重要だとわかります。しかし一方で、過剰摂取は逆に骨密度の低下につながる可能性も指摘されています。あくまで日常の活動量に応じ、過不足なくたんぱく質を摂取することが重要です。

まとめ

ダイエットのためにも、骨の健康を保つためにも重要な働きをするたんぱく質ですが、現代女性は、ほとんどの年代でたんぱく質の摂取量が目標量に達していません。とはいえ、さまざまな研究からたんぱく質の摂取しすぎも骨密度低下を招く恐れがあるとわかっていますので、活動量に応じて過不足なく摂取することが重要です。

監修者プロフィール

彦井浩孝NPO法人チャレンジ・アスリート・ ファンデーション理事長
彦井浩孝NPO法人チャレンジ・アスリート・ ファンデーション理事長

スポーツ栄養学の観点からも、運動やスポーツにおけるマグネシウムの働きには注目すべきところが多くあります。にがりを水や飲料に薄めて使用することで、スポーツや運動を楽しむ方が日常から手軽に海からの自然なマグネシウムを摂取することができます。

【プロフィール】
オレゴン州立大学健康人間科学研究科博士課程修了。博士(Ph.D.)。NPO法人チャレンジ・アスリート・ファンデーション理事長。横浜市病院協会看護専門学校非常勤講師。
専門は運動生理学・栄養学・トレーニング学。トライアスロン歴32年。

関連タグ