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水分補給をするタイミングって?スポーツや運動で飲むならいつがいい?

身体に水分が不足すると、さまざまな悪影響が生じることはよく知られています。特に、夏場に引き起こされやすい熱中症や、スポーツ・運動などで汗をかくときには、身体からどんどん水が失われていくため、積極的に水分補給をしなくてはなりません。では、水分補給を行うタイミングや量はいつ、どのくらいが良いのでしょうか。

体温が上がると汗をかくのはなぜ?

私たちは、体温が上がると汗をかきます。まずは、そのメカニズムについて見ていきましょう。

汗はカラダの「冷却機能」の基本

体温は、太陽や地表からの熱気温(室温)、体が生み出す熱(運動時のエネルギー代謝によって発生する熱)などで上がります。上がった体温は自然に放散されることもありますが、物と接触することや周りの空気の流れ(風など)で移動したり、汗や呼気中の水分が蒸発したりすることで放熱されることもあります。

つまり、汗をかくことは私たちの体が持つ冷却機能なのです。汗をかくと水分が失われますので、水分を適切に摂ることでこの冷却機能が保たれます。水分は私たちの体の半分以上を構成していて、体温調節や循環を維持し、細胞の営みにとって必要不可欠な存在です。

運動と発汗の仕組み

運動で身体が発熱しても、気温や湿度が低いときには汗をあまりかかなくても自然に放熱されていきます。しかし、高温多湿などで自然な放熱が難しい場合、汗が皮膚から蒸発するときの「気化熱」として放熱されなくてはなりません。夏場でなくても、室内での運動ではかなり汗をかきます。これは、発汗によって運動中の代謝で生み出される熱を身体の外に逃がすためです。

このように、運動中は体温を逃がそうとして皮膚の近くへの血流量が増えます。その分、運動している筋肉への血流を維持しなくてはなりませんので、心臓循環系の負担が大きくなってしまうのです。すると有酸素能力が低下し、一定の運動負荷を維持することが難しくなり、通常より低い負荷でも同じ努力が必要になってしまうこともあります。

運動中に汗をかいて体内の水分量の3%(体重の約2%)が失われてしまうと、体温調整が難しくなり、血液中の液体成分である血漿の量が大幅に減り、やがて熱中症に進行してしまいます。ですから、体温が過剰に上がりすぎるのを抑え、心臓循環系への負担を抑えながら運動を続けるためには、水分補給が欠かせません。

次章では、スポーツや運動の際、どうやって水分補給すれば良いか説明します。

「のどが渇く前に飲む」のは間違い?

以前から、「のどが渇く前に飲むこと」というように、積極的な水分補給が推奨されてきました。のどが渇いてからでは脱水がすでに始まっているため、それからの水分補給では手遅れとも、発汗によって減少した体重分の水分補給が必要ともされています。これらの情報は、果たして正しいのでしょうか。

過剰な水分摂取は低ナトリウム血症のリスクにつながる

過剰な水分摂取は、水分が腸から吸収されず腹痛や下痢の原因になったり、胃から腸へ排出されず胃の中でちゃぽんちゃぽんと滞留したり、吐き気を引き起こしたりと胃腸系のトラブルを引き起こしてしまいます。逆に、腸から必要以上に水分が吸収されてしまうと血中の水分量が増え、血中ナトリウム濃度の低下を引き起こし、正常範囲を下回ると低ナトリウム血症になってしまうことがあります。

低ナトリウム血症は、めまい、けいれん、頭痛、方向感覚喪失、昏迷などの神経障害を引き起こし、重篤な場合では死に至ることもありますので、炎天下の運動や活動時に問題とされる熱中症などと並んで、気をつけなければならない重大な健康問題の一つです。

安静時であれば、過剰に摂取された水分は腎臓で尿となって排出されますので、ダイエットや美容のためにこまめに水分補給することは問題ありません。しかし、ストレスのかかる運動時には抗利尿ホルモンなどの影響でこれが抑制されてしまうので、低ナトリウム血症を引き起こしやすくなってしまいます。

他にも、イブプロフェンを含む鎮痛剤の摂取が低ナトリウム血症のリスクを上げると考えられています。マラソンやトライアスロンなどでは競技前にこうした鎮痛剤を摂取する人も少なくないので、競技前から低ナトリウム血症が起こりやすい状態になっていると推測されます。

スポーツや運動中の水分補給は「のどが渇いたら」飲む!

前述のように、必要以上に水分摂取を行っても意味がないばかりか、健康管理上のリスクが発生してしまいます。ですから、運動中は「のどが渇く前」ではなく、「のどが渇いたら」飲むことが低ナトリウム血症のリスクを回避でき、水分補給を行う上でも適切でしょう。

運動時は汗をかくことで水分だけでなく電解質、特にナトリウムを失ってしまいます。汗がしょっぱい理由はこれなのですが、発汗量が多くなると、当然その損失も大きくなります。安全に快適に運動を続けるためには、水分だけでなくナトリウムなどの電解質を含む水分を補給しましょう。

高齢者、子ども、夏場は水分補給に要注意

ただし、以下のように「のどが渇いたら飲む」を指針にできないケースもありますので、注意しましょう。

  • ・高齢者や子どもは、「のどが渇いた」と認識するのが遅れることも
  • ・夏場は非常に暑く、のどが渇きっぱなしになる

このような場合は、「のどの渇き」を目安に水分摂取を行っていると、水分不足を引き起こしてしまったり、過剰摂取になって胃腸の調子を崩し、低ナトリウム血症のリスクを高めてしまったりします。高齢者や子どもの場合は、水分が不足しすぎないよう特に注意が必要です。夏場は水分補給によって体温上昇を抑えることだけでなく、他の手段を使って体を冷やすことや、運動や活動を中止することも検討しましょう。

スポーツや運動の際に気をつけたい、水分補給のポイント

スポーツや運動のときには、以下のポイントに気をつけながら水分補給しましょう。

1. 運動前は、次のように水分摂取を行っておく
・通常の食事と合わせて飲み物を摂る
・500~600mlの水分を、運動の4時間前から摂る
・日々の体重の変動は主に体内の水分量の変化によるものなので、毎日の体重変化に応じて水分摂取量を調整する

運動中は、のどの渇きに応じて水分摂取を行う
・1時間あたり800mL以上の水分摂取は、低ナトリウム血症予防のために避ける。ただし、発汗量や体の大きさにもよるので調整する
・長時間にわたる運動の際は、少量(6~8%程度)の糖質とナトリウムが含まれる飲料を摂取する

3. 運動後も、水分補給を行う
・体重減少量1kgあたり、1~1.5Lの水分を摂ることで回復を促す
・食事と合わせて飲み物を摂る

適正な水分摂取量は、体の大きさ(体重)の違い、性差、体力差、暑さへの順応などの個人差、運動強度と時間によっても異なります。上記を参考に、自分に合わせてアレンジしましょう。

まとめ

汗は身体の冷却機能の基本で、運動時に上がった熱も汗で放散されますが、過剰な水分補給は低ナトリウム血症を引き起こすリスクが高まります。運動中は「のどが渇いたら」水分補給する、ナトリウムなどの電解質を含む水分を補給することに注意しましょう。

監修者プロフィール

彦井浩孝NPO法人チャレンジ・アスリート・ ファンデーション理事長
彦井浩孝NPO法人チャレンジ・アスリート・ ファンデーション理事長

スポーツ栄養学の観点からも、運動やスポーツにおけるマグネシウムの働きには注目すべきところが多くあります。にがりを水や飲料に薄めて使用することで、スポーツや運動を楽しむ方が日常から手軽に海からの自然なマグネシウムを摂取することができます。

【プロフィール】
オレゴン州立大学健康人間科学研究科博士課程修了。博士(Ph.D.)。NPO法人チャレンジ・アスリート・ファンデーション理事長。横浜市病院協会看護専門学校非常勤講師。
専門は運動生理学・栄養学・トレーニング学。トライアスロン歴32年。

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